吉川祐介『限界分譲地』朝日新書

バブル崩壊の直撃を受けた不動産は、その後どうなるのだろう。土地や家屋は価格が下がり、やがて底値で売却される。もしくは人口減と相まって無人の荒野に戻る、というのが一般的な想定だろう。

新幹線と関越道で交通至便の「湯沢」を名乗りながらも駅から20kmは山奥の苗場スキー場では、1990年代に数千万円で取引されたリゾートマンションがなんと10万円へ暴落している。供給過剰なうえに管理費や修繕積立金が重荷で、底値でも買い手が現れない。いわゆる「負動産」である。

吉川氏は前作『限界ニュータウン』(太郎次郎社エディタス)で成田空港周辺や総武本線、外房線といった八街を含む千葉県北東部の小規模ニュータウンを素材に、投機が不動産市場を歪める様を鮮烈に描いた。

空き地の所有者は大半が固定資産税や管理費、草刈り費用を払い続ける不在地主で、タダでも譲りたいが安価過ぎて不動産屋は仲介したがらない。物件を手放すには一定の不動産取引の知識が必須だ。

戦後に日本人が奉った地価が下がらないという「土地神話」は、土地バブルであった。「負動産」の解消により、実需を欠いたハリボテの戦後は終わる。