毎日新聞「今週の本棚」 2023.6.24
鈴木聖子『掬われる声、語られる芸 小沢昭一と「ドキュメント 日本の放浪芸」』春秋社
『ドキュメント 日本の放浪芸-小沢昭一が訪ねた道の芸・街の芸』は1971年に日本ビクター株式会社(当時)から発売された7枚組のLPレコード集である。
万歳とその他祝福芸の「祝う芸」、絵解と舌耕芸の「説く芸と話す芸」、盲人芸と浪花節の「語る芸」、香具師による「商う芸」、音曲や猿まわし等「流す芸」の構成で、全国の路傍で演じられた多種多様な漂泊の芸が収録された。同年の日本レコード大賞企画賞を受賞。
本書は世評も高いこのシリーズが誕生した舞台裏を詳細に探っている。
小沢は放浪諸芸をそのまま継承したのではない。自身の独自の芸風を確立するために肥やしとしたのだ。小沢が1973年から2012年まで続けた代表作、TBSラジオのトーク番組『小沢昭一の小沢昭一的こころ』の絶妙な口演には、放浪芸が昇華している。