大熊ワタル編「我方他方 サックス吹き・篠田昌已読本」共和国、2022

幼少期から腎臓などの病に苦しみ、34歳で亡くなった「サックス吹き」篠田昌已。2022年は没後30年。2008年刊行のパンフレットの増補版が本書である。

あまちゃんのテーマの作曲家として知られる大友良英がジャズ番組で特集を組み、熱く語ったことで再注目されている。同じ熱量で哀悼する約60の文章が集められた。

1980年代、日本の音楽界で最前線のバンドだった「生活向上委員会」と「じゃがたら」に所属。パンクロックとフリージャズで熱くブロウしたが、その奏法を劇的に変えたのが、下北沢におけるチンドンとの出会いだった。晩年の『コンポステラ』では誰も吹いたことのない「風が吹くような」美しい音色と世界の民衆音楽にたどり着き、斃れた。

大友の「彼の前に出ると、見栄を張っている自分が小さく見えて、なんだか情けなかったなあ」という言葉が胸を打つ。