松原隆一郎「保守主義者たらんとする者」

『発言者』が刊行され、私も一年間、「電柱論」を含む景観論を連載させていただいた。それが終わりに近づいた頃、我が家の電話が鳴り、一枚のファックスが流れてきた。そこには「若手の諸君が控えている。そろそろ連載をやめてくれたまえ」と墨痕鮮やかに書かれていた。

西部氏にとっての保守は徹頭徹尾言語にこだわるものであった。私にとって保守すべきなのは、景観や街並みなど感覚でつかみ取られるもの、身体性である。

 西部先生は、我々に多くの宿題を残して去って行かれた。保守的たらんとする者は、各人各様にその課題に応えつつ生きる他ないのである。