西部邁『保守の遺言』平凡社新書

「公式の遺書」という稀有な書である。
自裁の理由は前著『保守の真髄』(講談社現代新書)で明かされた。自分が「病院死」したときに迷惑をかけて構わないほどの契りを交わしたのは亡妻のみ。愛娘であっても焼かれた世話への返礼が十分にできないという。

葬儀では棺の中から「どうだ、うまくやったろ?」と語りかけてきそうな綺麗な死に顔だったが、後に補助者が有罪となる。没後に汚点が沁みたのは残念だ。