「松原隆一郎の出稽古日記 第18回」『水道橋博士のメルマ旬報』め組
NINEPACKジム 西新井
北沢勝さんと言えば、と言っても、多くの方はご存じないだろう。格闘技ファンを自称する人でも知らないかもしれない。現役時代は新日本キックのウエルター級チャンピオンであり(2002年から04年頃)、いぶし銀の強さを誇。
なにしろ「超合金」と呼ばれた武田幸三選手と同じウエルター級の後の王座に就いている選手なのだ。そして同じ新日本キック王者でも、ラジャダムナンでタイトルを取った石井宏樹さん、いまやKNOCK OUTのプロデューサー(近々退任)としても知られる「キックの赤いバラ」小野寺力さんといったスター選手たちとは、華やかさが違ったのは事実かもしれない。
いまから20年も前、大道塾の飯村健一先生が奥多摩だったかで合宿をするということで参加してみたら、我々が飲み始めるまえにすでに酔っている人たちがいた。それが新日本キック勢、北沢さんと(後に同じくウエルター級王者となる)正木和也さんだった。
北沢さんは「怪鳥」を自称しているが、乗り切れない我々とは対照的な「ギャハハハ」という笑い声は、まさに怪鳥であった。そして私らが度肝を抜かれて呆然としていると、いつの間にか正木さんはパンツを穿いておらず、首に帯をかけ、褌のように股間まで垂らしている。これには我々も涙腺が破壊されるほど笑わされ、酒席は一気に和んだのだった。女性も同席していたような気がするが、ともあれ「プロは本気で面白いなぁ」というのが北沢さんの第一印象であった。