川本三郎「『細雪』とその時代」中央公論新社

筆者は放送大学のオンライン授業「社会科学で綴る伝記25」で、谷崎が『細雪』を書いた椅松庵と庭続きだったお隣さんのベルギー住宅「楢崎猪太郎邸」の内部を撮影,紹介している。
そうしたインサイダーからすれば、谷崎の住吉川周辺にかんする意地悪なほどのインサイダーぶりには驚かされる。
地元の不動産業界では知られていることだが、『細雪』の「芦屋の家」は、戦中は武庫郡にあり、戦後に芦屋市に編入された「ニセ芦屋」である。
そうした上流階級の崩壊ぶりが綴られるのが『細雪』なのだ。