商業界ゼミナール「若者に託す 我々がしたこと、やり残したこと」

岡田卓也(イオン名誉会長)

辻井喬(セゾン文化財団)

倉本初夫(商業界 主幹)

栗原一博(運営委員長)

コーディネーター・松原隆一郎

2012年2月21日16:40~18:10 会場・東京ベイ幕張

観客770名を集めて行われた。前段で辻井喬(堤清二)氏による講演「私が商人だったころ 豊かさとは何かーセゾンの挑戦と挫折」が行われ、その内容を松原が要約し、イオン創業者の岡田卓也氏に質問を投げかける形で話を進めた。

①セゾンの内外の先端的な芸術を紹介する文化事業や、消費者に新しいライフスタイルを訴えるような広告について、岡田氏はどう見ているか。イオンも植樹を初め社会貢献に非常に熱心な企業体だが、社会とのつながりをどう考えているのか。

(岡田)西武百貨店の文化戦略は、三越や高島屋といった老舗百貨店に対し新しい百貨店像を打ち出すものとみていた。岡田屋は、終戦直後の焦土にチラシを撒くことから出発したが、チラシを平和の象徴とみて涙するお客の姿がそこにあった。

②現在の消費者は変わったといわれている。GDPが伸びても幸せになっていない、自動車を必需品と思わなくなったともされるが、どう見ているのか。

(岡田)中国では、まだまだ豊かになりたい人々がいる。商人にとってはこれから変化と競争が始まる。

(倉本)消費者や若者には潜在的な可能性がある。それを流通がつかまえるには、画一化・合理化だけではいけない。

③経済のマクロな環境としてドルの国際的な地位の低下があり、国内では東日本大震災があった。こうした環境の変化にどう対応するのか。

(岡田)趨勢はグローバル化ということ。中国では山東省だけで日本と同じ人口がいる。日本だけにこだわる必要はない。

④辻井氏は、商人としての姿勢を示す言葉を多く語った。「夢中になれ」「失敗はするもの。たえず前向きに」「クレームは、背後の問題の大きさに敏感であれ」「大きなミスをしたら、トップが一人でお詫びに行け」「トップも現場を知れ」等。岡田氏も後進に訴えることがあるか。

(岡田)士農工商というように、日本では「商」はもっとも低い地位とされてきた。私は、執念を燃やして商人の地位向上に努めてきた。小売業のトップは、人格と力量で尊敬される存在でなければならない。

以上。会場は、流通界の2巨人の声を聞き漏らさぬよう、熱心に耳を傾ける観客の熱に包まれた。