寄稿「古賀稔彦さんを悼む」

 相手が足をばたつかせながら空中を一回転する「一本背負い」は豪快かつ美しく、世界中を魅了した。
 体重無差別の闘いも鮮烈だった。1990年の全日本選手権では30kgから80kgも重い相手を四人撃破した。

 古賀氏の秘技「一本背負い」は、細い袖ではなく、脇の下を持てば「切られない」という発見から開発された。

 古賀氏は2000年のシドニー五輪に挑戦、叶わず引退した後も、固定観念を打ち破る革命児だった。代表になれる可能性が低い自分を応援してくれる人が存在すること気づき、「人の夢をサポートする喜び」に目覚める。

 金メダリストが少年少女に指導する町道場『古賀塾』を2003年に開設。決して暴力を振るわず、「その子のこれからの道、目指せる道を、一緒に見つけてあげる」をモットーとした。私たち市井の愛好家まで人生で救われるためのツールとして柔道を位置づけたのだ。