野村進『日本領サイパン島の一万日』(中公文庫)

 南洋のサイパン島は八王子市ほどの広さ。第一次世界大戦後に日本の委任統治領、太平洋戦争では日米の激戦地となって、五万七千(うち民間人一万数千)が死亡した。著者は1987年、改題前の本書『海の果ての祖国』で、本土防衛の最前線で生じたこの戦禍に至る同島の歴史を、「南洋成金」の山口百次郎、「小作農」の石山万太郎の対照的な二家族を軸にたどった。

サイパンは日本現代史の凝縮である。そう確信する著者の、若き日の傑作である。