マリー=モニク・ロバン『モンサント』村澤真保呂・上尾真道訳、作品社
マーティン・ウルフ『シフト&ショック 次なる金融危機をいかに克服するか』早川書房
長谷部浩『菊之助の礼儀』新潮社
①は遺伝子組み替え作物の種子メーカーが関係者を政府の規制委員会等に送り込んでいることを、ネット上で閲覧可能な資料のみから論証する。モ社の恐ろしさが伝わる本。同社は安全と認定されている遺伝子組み替えの表示が風評被害をもたらすとして、削除を求めている。TPP交渉でこれが争点となったのか気になるところだ。②は近年の金融危機が生じた理由を、金融市場の自律性に楽観的であった論者を批判しつつ、近年の経済理論を精査することにより探る。金融論界の重鎮の批判だけに、看過しきない迫力がある。③は現代演劇評論家が、歌舞伎界のサラブレッドとの交流を通じ、役者たちの役作りを息遣いまで活写する。著者自身の伝統芸能への理解の深まりが役者の成長と響き合い、格好の歌舞伎入門書ともなっている。