東北経済連合会にて。観客200名弱。

構造改革で対外金融資産を貯め込むという「重商主義」を背景に、日本経済が弱体化したという趨勢の説明が前半。

後半では、世界一の対外資産持ちが東北の復興へ融資をためらう様を、「護送船団方式」解体後の公共性なき金融界として描き、そこに欠けるものを「準公共財」と表現した。

「公」にはハードとしての公共財と、ソフトとしての公共心の二面があるべきで、後者は民間の経済活動における公的な配慮(「準公共財」と呼ぶことにする)のことである。個人所有の家がつくりだす景観や、露地の植木などで表象されるものだが、経済活動におけるモラルもそれに当たる。

とりわけ東北の建設業界各社がつなみ警報もとけぬ内に道路啓開に出動した件は、建設業界が地形や道路、重機使用にかんする知識・気概という準公共財を提供していることの好例となった。

建設業界をたんなる談合の巣窟とみなすだけでは、復興の初動がなぜ彼らによって開かれたかは理解できないだろう。

国交省東北整備局の「啓開」活動とともに、長く記憶に残されるべき事例である。

麻生幾『前へ!』文藝春秋、参照。