千葉県で台風被害から生じた大規模な電柱倒壊・停電に関連して、「無電柱化はなぜ進まないのか」という質問を多数いただいております。

これについての私見は雑誌『国際社会科学』2017、東京大学総合文化研究科国際社会科学専攻の私の退職記念号で論文を書いておりますので、そちらをご覧下さい。

要点としましては、「電柱を立てることの迷惑料が社会に支払われていない」「占用料金に迷惑料(外部不経済)が含まれていないから」となります。以下、今回お答えしている内容です。

*今回、多くの電柱が倒れたわけは?
例年、沖縄や奄美では多くの殿中が倒れ、停電が生じている。
H27年では台風シーズンの五ヶ月間で、倒壊500本、1日3本。停電のべ110万戸、通信障害5万回線。

*無電柱化は、日本では、どのくらい広がっている?
都だけだと50%近いがそれは都道。23区だと10%程度か。
大坂6%、日本全体の平均値はもっと低い。

*無電柱化が広がる以上に、電柱を新設している?
無電柱化は自治体や国交省が「税金を使って埋めるからお願い」し、電力・通信事業者が「おつきあい」する形で進んできたが、電力・通信事業者は埋めると費用がかかるので、多くは「おつきあい」せずに新設を進めている。

*ヨーロッパでは、無電柱化をきくが、日本で無電柱化が進まない理由は?
社会主義圏では事業は国営なので、先進国になると埋める。
自由主義圏では、国が命令しているので建てると違反コストがかかり、事業者は埋める。

*電柱を新設するのと、無電柱化をすすめるのと、コストの比は?
東電によると、1kmあたりで地中化1.65億円、電柱で0.15億円。

*全国を無電柱化しようとすると、どのくらいの費用が?
この質問は、そもそも税金で埋めることを前提してしまっている。
事業者には、現状では埋設コストを下げるインセンティブが存在していない。

*無電柱化を広めるために必要なことは?
無電柱化が進まないのは、電柱が社会に与えている「迷惑料」を払っていないから。
道路法の「義務占用」の考え方により、数年前まで電柱は建て放題だった。現在も、制限されていない区域では、一本当たり月200円~100円程度の占用料(道路の間借り料)しか支払っていない。これを50倍、1万円~5000円にすれば、自動的に埋めざるをえなくなる。
自治体にとっては税収は増えるし、それを無電柱化に使えばどんどん進む。

したがって無電柱化が進まない理由は、電柱を立てる事業者が道路管理者に支払う「占用料金」において、電柱が社会にかける迷惑を一本当たり9800円/月(or4900円/月)と算定していないから。この算定式により、結果的に電柱は放置されている。

迷惑料を支払うことが義務づけられると、事業者はみずから埋設コストを下げようと、技術革新を始めるだろう。つまり現状では埋設コストを下げるインセンティブが存在していない。