松原隆一郎

今日の経済はもっぱら経済学の主流学説にのっとって理解され、それにもとづいて政策が施行されている。ではその理解はどのような特徴を持つかというと、商品と商品の交換を媒介する貨幣は同じ速度ですべての方向に使われる傾向があると仮定することで、実質的に貨幣が経済の実態に及ぼす効果を小さく見積もっている。けれども日本では企業が収益を内部留保し投資に用いないために、貨幣の流れがせき止められるという現象が起きている。これは貨幣のはたらきによる不況といえるだろう。本稿では、このように貨幣に注目して経済を分析しようとしたケインズとハイエクの主張を参照しつつ、今日の経済を見直してみたい。